研究概要 |
1.研究の目的 我々が独自に行っている内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とsentinel node navigationによる腹腔鏡下リンパ節郭清術(LLD)併用療法には解決しなければならない問題が存在する。リンパ節(LN)周囲の癌細胞の存在である。目的は胃間膜全割にてこれらを検索し新たな知見を得ること、過去の胃癌症例リンパ節ブロックの再検索により生存率や再発率との関連を明確にすることである。LN周囲の癌細胞を間膜内癌細胞(cancer cell spread in mesogastrium:CSM)と定義した。存在形式により脂肪織内(sct)、リンパ管内(ly)、脈管内(v)、転移陽性LN周囲への癌浸潤(ext)に分類した。 2.研究実績 (1)間膜全割による検討 全割検索した34例中3例にCSMを認め、原発巣はいずれも進行癌であった。広範囲から多様なCSMが検出され、進行癌のリンパ節郭清の際に注意を払う必要がある。 (2) 過去の症例の検討 深達度sm-ssの胃癌144例のLNブロックを再検索した。深達度はsm 67,mp 23,ss 54、ステージはIA 46,IB 45,II 30,IIIA 9,IV 14、組織型は分化型10,未分化型44であった。23例(16%)にCSMが検出され、ステージはIB 2,II 8,III 3,IV 10であった。ext 15,ly14,v 3,sct 2(重複有り)であった。.進行癌29%、sm癌1.4%でCSM陽性であった。CSM陽性例は有意に腫瘍径が大きく、深達度も深く、ステージも高く、LN転移,リンパ管侵襲,静脈侵襲,腹膜播種,肝転移などの陽性例が多かった。根治切除後の累積5生率はCSM陽性例で有意に不良であった(91% vs. 60%, P=0.01)。CSMは多変量解析にて静脈侵襲,LN転移と共に独立した予後因子として抽出され(P=0.04)、補助療法の必要性を考慮する指標となりうる。
|