研究概要 |
本研究の一環として、高悪性度星細胞腫におけるSurvivin発現の局在と予後との関連について免疫組織化学的検討を行い報告した。対象は1994年〜2003年に広島大学脳神経外科において加療した53例(退形成性星細胞腫:19例、膠芽腫:34例)で、全例、外科的切除術、放射線療法を施行した。方法は摘出標本のSurvivin免疫染色を行い、発現の局在をN群(核)、C群(細胞質)、N/C群(核、細胞質両方)の3群に分類した。細胞内局在と予後との関連についてLogrank testおよびCoxの比例ハザードモデルを用いて統計学的解析を行った。結果は、N群:10例、C群:24例、N/C群:19例で、単変量解析ではN群とC群間では有意差を認めなかった(p=0.796)が、N/C群では他群と比較し有意に生存期間が短かった(p<0.0001)。多変量解析でも有意差を認めた(Hazard ratio:8.635,p<0.0001)。これらの結果より、Survivin発現の局在の検討は、High-grade astrocytomaの予後予測因子として有用であることを報告した(Saito et al., J Neurooncol82,2007)。 続いて培養細胞を用いて、RNAi法を用いたsurvivin発現抑制による悪性グリオーマ細胞の放射線増感機序についてさらに検討を進めた。実験には悪性グリオーマ細胞株U251MG(p53,変異型),D54MG(p53,野生型)を用いた。中心体の蛍光免疫染色、FISH法による解析では、survivinの抑制により、染色体の不安定性の程度に比例して放射線感受性が増加することが示された。またこの効果はp53の機能の違いにより影響されることも判明した。さらにTUNEL法によるアポトーシスの評価では、survivin抑制後の放射線誘発細胞死はアポトーシスによるものではなく、細胞周期解析の結果からは異数倍体の状態から直接細胞死が誘導されており、分裂期崩壊等によることが示唆された。これらの結果を論文投稿し、publishされた(Saito et al., British Journal of Cancer98,2008)。
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