研究概要 |
骨・軟部腫瘍に対する治療において腫瘍摘出後の巨大な骨欠損の再建を要する例や、高エネルギー外傷により骨格の解剖学的形状が失われその再建に難渋する例はしばしば存在する。このような例に対する骨性支持組織の再建方法として,現在,自家骨移植,同種骨移植および人工材料を用いた方法が挙げられるが,これらを駆使しても、支持組織としての骨の機能を有し,解剖学的に健常に近い骨格を再建することは,巨大な骨については困難である。この問題を解決するには,人工的に作成でき、移植後自家骨に置換され,さらに生体に対し安全な材料の開発が必要である。目的は,CADにて解剖学的に正常な骨格を設計,CAMおよび3D切削加工機で生体活性材料を加工,これに骨誘導能を与える為に骨形成蛋白(BMP)およびその薬物伝達系(DDS)を添加し,骨形成性人工骨格を作成・使用し、現在困難である巨大骨欠損の解剖学的,機能的再建を実現することである。術前にビーグル犬の骨盤CTを撮影し、得られたデータから欠損部を充填する3Dデータを作成し,これを基に生体活性セラミックの切削加工を行い、骨欠損部を充填するインプラントを作成する。骨形成能を持たせるために、BMPにDDSとして我々が開発してきたポリマーを加え、インプラント表面に塗布する。コンピュータ上で計画した骨盤部分欠損のデータを手術ナビゲーションシステムに読み込ませ、術前計画通りの骨切除を行い、作成した骨切除部分に、骨形成能を有するインプラントを充填する、術後経時的にCT撮影を行ったところ、インプラント周囲に新生骨の形成が認められ、最終的に新生骨がインプラント上を被覆していた。本研究で、ビーグル犬の腸骨における巨大骨欠損を術前インプラント作成とナビゲーションシステム支援手術、BMPの併用によって良好に再建することができた。
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