研究概要 |
ロボットシステムを用いて,正常膝関節および再建膝関節の3次元力学試験を行い,膝の挙動と前十字靭帯の機能について調べた.力学試験は前十字靭帯に張力が伝わる前方引き出し試験,外反試験,内旋試験,およびピボットシフト試験とした.正常膝の場合,前方引き出し試験では既報告と同様に,伸展位では後外側線維束が緊張し,屈曲するにつれて前内側線維束が緊張することが分かった.前内側線維束を内側と外側で二分し,改めて前内側線維束と中間線維束として分けると,中間線維束は全屈曲角度で比較的緊張し続けるのに対して,前内側線維束は緊張度の変化が大きく,伸展位ではほとんど緊張せず,屈曲に伴って張力が増大した.外反試験や内旋試験においてもほぼ同様の結果となり,前十字靭帯を構成する3線維束の機能分担の特徴が明らかになった. 一方,正常膝の実験で用いた膝に骨孔を作り,あらかじめ採取しておいた腱組織等を用いて前十字靭帯三十束再建術を行った.実験途中に骨孔が破損する危険があると考えられたため,あらかじめアルミニウム円筒に骨孔と同じ大きさ,形状,方向の孔を作り,円筒と同形状の孔を骨にあけ,円筒をつけはずしすることで,さまざまな再建手技を再現することとした.その結果,一重束再建に比べ,二重束再建および三重束再建の方が膝の剛性が増すことが明らかになった.また,二重束と三重束では有意差はないものの,三重束再建の方が前方剛性が高まることが分かった.外反試験や内旋試験においても,三重束再建による膝関節の剛性が一重束再建や二重束再建に比べ有意に高くなることが分かった.正常前十字靭帯の機能を再現するという観点からは,三重束再建術が最も優れていると判断された.
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