研究課題
基盤研究(C)
平成18年度はまず、出血性ショックが非代償期に至る重症例においても、吸入麻酔薬の中枢における薬剤感受性が変化しないのか、輸液蘇生がなされた場合はどうか検討した。実験は12匹のブタを用いた。イソフルラン吸入により導入し、吸入濃度2%で維持した。大腿動脈に観血的動脈測定ライン(および脱血ライン)、右内頚静脈に肺動脈カテーテル、中心静脈カテーテルを留置した。脳波およびカプノグラムを持続的に測定し記録した。吸入イソフルラン濃度を三つの状態(コントロール、40%出血、40%出血後輸液蘇生)において変化させた(すべての状態で、吸入濃度を2%から0.5%にして25分間維持、その後2%に戻して25分間維持)。このときの呼気終末イソフルラン濃度の変化および脳波の変化を薬物力学的解析に用いた。結果は脳波(SEF)を用いた用量反応曲線が40%出血によってわずかに左方移動した(EC50が1.12%から1.00%へ減少)。すなわち、非代償性出血のレベルではわずかに吸入麻酔薬の鎮静効果が上昇したが、これは臨床上ほとんど問題にならない程度のものであった。また輸液は出血による血行動態の変化を回復傾向に導き、吸入麻酔薬の効果器への到達時間(keO)も回復させたが、脳波効果の上昇(鎮静効果の上昇)を回復することができなかった。平成19年度はフェンタニルを併用しても出血性ショック時に吸入麻酔薬の中枢での感受性は変化しないのか、フェンタニル持続投与下で検討した。実験のプロトコール、データの解析法は平成18年と同じだが、三つの状態を(コントロール、フェンタニル持続投与下(20mcg/kgボーラス後10mcg/kg/hr)、フェンタニル持続投与+40%出血)で行った。データは4例のみであるが、フェンタニル投与下でも出血性ショック時の吸入麻酔薬の薬効はほとんどかわらなかった。この実験については今後症例を増やしていく予定である。
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Anesthesia & Analgesia 105
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Anesthesia & Analgesia 105(3)
British Journal of Anaesthesia 96(5)
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