研究課題
基盤研究(C)
ある種の全身麻酔薬は、多幸感をもたらす作用を有しており、乱用されることがある。近年、同様に多幸感をもたらす大麻の主成分であるカンナビノイドの受容体に作用する内因性物質アナンダマイドが発見され、アナンダマイドは向精神作用のほか鎮痛にも関与していることが明らかにされた。本研究の目的は、全身麻酔薬の中枢神経作用と中枢神経内アナンダマイド系の関連を検討し、全身麻酔薬の向精神作用薬現機構を神経化学的に明らかにしようとするものである。Wistar系雄性ラットにカンナビノイド受容体CB1の拮抗薬SR14171(リモナバン)を投与し、全身廃酔薬亜酸化窒素の鎮痛作用に及ぼす影響をテイルフリック時間測定によって検討した。その結果、リモナバンの腹腔内投与および脳室内投与は、亜酸化窒素吸入によるテイルフリック時間の延長、すなわち鎮痛作用に影響を及ぼさなかったが、用量依存性に鎮痛作用に対する急性耐性の形成を抑制した。一方、リモナバンのくも膜下投与は亜酸化窒素の鎮痛作用に拮抗した。以上の結果は、全身麻酔薬亜酸化窒素の作用発現に脳内のアナンダマイド系は関与していないが、鎮痛作用に対する急性耐性発現に脳内のアナンダマイドが関与していることを示唆するものである。また、全身麻酔薬亜酸化窒素の鎮痛作用には脊髄レベルでアナンダマイドが関与している可能性を示唆するもので、脳内と脊髄レベルではアナンダマイド系の関与に違いがあることが明らかとなった。
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