研究概要 |
目的:下部尿路閉塞ラットを用いて膀胱のstroml cell-derived factor 1α(SDF1α)の発現と経静脈的に投与された骨髄由来間葉系細胞(MDS細胞)の遊走・分化について検討した。 方法:(実験1)SDF1αを正常膀胱に投与し、経静脈的に投与しMDS細胞の遊走について検討した。(実験2)下部尿路閉塞ラットを用いて経時的にHIF1α,SDF1αの発現について定量的PCRを行った.(実験3)GFPラットのMDS細胞を経静脈的に投与し、下部尿路閉塞群と対照群でMDSの誘導及び分化について検討した。 結果:(実験1)対照群では静脈内投与したMDS細胞の膀胱への遊走は全く認めなかったが,SDF1αを注入したSDF1α群では,GFPでラベルされたMDS細胞の膀胱への遊走を認められた。(実験2)下部尿路閉塞群では1日目において,HIF1α-mRNAは有意な増加を認めたが,BOO作成後3日目以降は減少した。SDF1α-mRNAも同様に1日目にSham群の有意に増加し、3日目には減少したが、14日目には対照群の2.5倍に増加していた。(実験3)下部尿路閉塞群では1日目おいて膀胱粘膜下および漿膜下の間質にMDS細胞の遊走を認めた。14日目においてもMDS細胞が膀胱組織に確認され、その一部は平滑筋層にも存在していた。平滑筋層に存在した一部のGFP陽性細胞は、紡錘状の形態とα-SMA染色陽性を示し,平滑筋様phenotypeに分化していることを示唆する所見を認めた。 結語:下部尿路閉塞膀胱のリモデリング過程において,虚血により誘導されたSDF1αが膀胱組織へのMDS細胞の遊走・接着に関与していると考えられた.これらの機序の解明・制御は,BOOにおける下部尿路機能障害の新たな治療法の端緒となる可能性があると考えられた。
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