研究概要 |
電気刺激による膀胱粘膜刺激閾値の検討では,間質性膀胱炎患者においては,膀胱粘膜下に存在するC線維を介する求心性知覚神経系が前立腺肥大症患者に比べて亢進していることが示唆された.臨床的にもレジニフェラトキシン(RTX)のTRV1受容体に対する脱感作作用を応用したRTX膀胱内注入療法は,他の保存的治療に対して抵抗性を示す難治性の排尿筋過活動や間質性膀胱炎に対するセカンドラインの新しい薬物療法として期待の持てる結果が得られた.P2X3受容体は,RTX非感受性C線維を介して排尿反射の求心路を促進する作用を有することが判明し,TRV1受容体とは異なるRTX非感受性膀胱求心性C線維に存在する新たな治療標的となる可能性が示された.以上から,RTXに代表される,尿路上皮膀胱求心性知覚神経系に作用すると想定される薬物は,過活動膀胱や間質性膀胱炎による蓄尿機能障害の治療薬として有望と思われた. ヒト羊膜の膀胱再生への応用の可能性をラットを用いて検討した結果,ヒト羊膜は膀胱拡大術に利用しうる組織としての特性を有し,膀胱再生過程は,正常組織からの伸長によるもので,尿路上皮,平滑筋,神経線維の順に再生することが判明した.また,羊膜由来間葉系幹細胞および骨髄由来培養細胞は,膀胱の実験的凍結傷害部位に移植すると,その部位で生着しうること,骨髄由来培養細胞については,凍結傷害の平滑筋層の再構築に寄与して修復を助長する効果があることが示された.このような再生医学的アプローチは,難治性膀胱蓄尿障害の新しい治療法として期待しうると考えられた. 乳幼児の下部尿路機能は,個体の発達に伴って,より機能的に成熟した精緻なものへと発達することが明らかになった.このような下部尿路機能の発達過程とその発達障害を解析する手法は,成人における下部尿路機能障害の病態生理を解明する上でも大きな助けになると考えられた.
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