研究概要 |
EDTA採血やクエン酸採血では遠心分離した血小板分画のカルシウムイオンがキレートされており, annexn Vの血小板膜表面の酸性リン脂質への結合が妨げられた.このため, annexin Vを用いた実験はヘパリン採血で行った.血小板をホルムアルデヒドで固定・不同化し,実験に利用したが,ホルマリンによる経時的な血小板の活性化が起こり,ホルムアルデヒドを用いた血小板固定による血小板の保存は困難と考えられた.以上より無固定のまま血小板を実験に供する必要があると考えられた.婦人科悪性腫瘍患者からチトラート採血・ヘパリン採血を行い,Dダイマー値の変化をバイダスアッセイキットD-ダイマー2を用いて測定した.ヘパリン採血の方が常に大きい値を示し,両者には相関係数0.998の強い正の相関が見られた.婦人科悪性腫瘍患者は健常人と比較して血液凝固が亢進していた.抗癌剤による化学療法前後における血液凝固の変化はDダイマーの変化のみでは捉えることはできなかった.活性化血小板膜表面に特異的に出現する酸性リン脂質を, Alexa Fluor 488で標識した酸性リン脂質結合タンパクannexin Vにより定量する方法を確立した. FITC標式より, lexa Fluor 488標識annexin Vの方が実験に再現性があった.婦人科悪性腫瘍患者の血小板凝集能は,健常人と比較して低い傾向を認めた.しかし,抗癌剤による化学療法前後における血小板凝集能の変化や酸性リン脂質出現の変化は,一般的な血小板凝集能測定検査や,今回導入したAlexa Fluor 488標式annexin Vの血小板への結合を用いた方法では一定の傾向を認めなかった. 今回の研究では,婦人科悪性腫瘍患者においても血液凝固が亢進していることが明らかとなった.抗癌剤は一般に血栓症誘発の原因と考えられており,使用前後における凝固の亢進が推察される.しかし今回の方法では明らかな亢進は認められず,更なる検討が必要と思われる.また,血小板凝集能の変化を捉えることは困難で,今回の方法を用いても明らかにすることはできなかった.血小板膜表面への酸性リン脂質発現をひとつの活性化の指標として実験を行ったが.他の観点からのアプローチも必要と考えられた.
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