研究概要 |
ヒト妊娠における着床の分子機序は不明な点が多く、不妊症治療の伸展の障害とヒト子宮内膜組織は、剥離・分化・再生を反復し、生殖年齢において妊娠の樹立に至適な環境を整えている。これまでに、その分化誘導に遺伝子転写の人為的促進剤ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)を使用することで、着床期特異的蛋白glycodelinの発現誘導を介して成功している。本研究ではこれに加え、下記の点につき明らかにした。 In vitro着床モデル(子宮内膜腺上皮モデルIshikawa細胞、胚モデルJAR細胞spheroid)を用いて、性ステロイドホルモンあるいはHDACIを添加することで、1.子宮内膜腺上皮細胞の細胞回転停止あるいは細胞死誘導を以て、増殖能を抑制しうる。(Ohta et.al.Mol Hum Reprod,2008)2.子宮内膜線上皮細胞の運動機能を有意に促進する。(Uchida, et.al.Endocrinology,2007)3.子宮内膜線上皮細胞の胚モデル着床を有意に上昇させる。(Uchida, et.al.Hum Reprod,2007)上記1.-3.はいずれもglycoldeinの発現誘導に依存している。 以上の結果より、ヒト着床においてglycodelinは、増殖・分化・運動の各細胞機能に着床に有利に影響を及ぼし、着床における接着自体にも正の調整に関与すると考えられ、glycodelinの発現誘導を可能にする薬剤HDACIは、着床促進補助薬剤として不妊治療に大いなるポテンシャルを保持する可能性が示唆された。
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