研究課題
基盤研究(C)
子宮頸癌の発症には約95%においてヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与するとされている。HPVはE6およびE7という2つの癌遺伝子をもち、それらのコードする癌蛋白はユビキチンープロテアソーム系を介して、ヒトの癌組織において遺伝子変異が認められる癌抑制蛋白質であるp53およびpRbを分解する。私はGST fusion蛋白としてE6APを発現させ、baculovirusを用いてE6蛋白を発現し、GST pull-down法により、E6-E6AP複合体の結合蛋白の同定を試み、細胞極性の決定に関わる癌抑制蛋白としてhuman Scribble(hScrib)を同定した。ショウジョウバエにおいてはScribbleは上皮の形成に不可欠な細胞極性決定因子であり、その遺伝子変異により、細胞は極性を失い、組織の異常増殖と腫瘍形成を来す。そのヒトホモログであるhScribは細胞に与えられたTNFもしくはUVなどのアポトーシスシグナルにより、分解されるdeath substrateであることが分かった。このdeath signalにより分解を受けないhScribの変異体(Asp-504-Ala)を導入した細胞では、UVを照射しても細胞膜に発現したhScribやE-cadherinは分解されなかった。このため、hScribはアポトーシスシグナル伝達経路においてdeath signalにより分解を受けることがアポトーシスの進展に重要な役割を持つことが分かった。この研究成果をGenes to Cellsに発表した。また、GST fusion E6蛋白に選択的に結合する蛋白をペプチドマススペクトロメトリー(PMF)法により解析し、新規のE6の結合蛋白として、乳癌において遺伝子の欠失が報告されているdeleted in breast cancer-1(DBC-1)を同定された。DBC-1はそのEF hand motif等を介してE6と結合し、E6はubiquitin-protein ligaseであるE6APとともにDBC-1をユビキチン化することにより分解する。細胞内において、プロテアソーム阻害剤もしくはE6に対するRNAiを添加したところ、HPV陽性の子宮頸癌細胞内のDBC-1の発現が増加することより、DBC-1の発現がこの細胞内ではE6によりコントロールされていることが明らかになった。プロテアソーム阻害剤の投与がこれらのE6により分解を受けているhScribおよびDBC-1の発現抑制を回復することから、プロテアソーム阻害剤の子宮頸癌に対する新規治療薬としての意義を現在検討しており、マウスの移殖したHPV陽性の子宮頸癌細胞の移植片に対して抗腫瘍効果を発揮することが明らかになった。今後は臨床への応用を検討して行く
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