研究概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)E4蛋白は、ウイルスの粒子の放出に重要な蛋白で上皮細胞内で大量に発現する。本研究では、HPV感染初期病変におけるE4蛋白の発現と免疫応答の関係を調査し、HPVに対する免疫の回避機構を明らかにすることが目的である。研究に先立ち、2006年度には、CIN患者の感染HPVタイプを明らかにするため、GP5+/6+PCR法に改良を加えて方法でHPV-DNA診断とsequence法によるタイプ判定を行った。その後、新しく市販されている3種類のHPV typing kitを用いた結果を比較検討したところ、検査法によりHPVタイプ結果が異なる場合があること、異なるHPVタイプの混合感染が予想以上に多いことを発見した。特に混合型感染例におけるHPVタイプ一致率が低い傾向がみられる。現在、これらの調査結果を解析し、各kit間の違いを明らかにしている段階である。 HPV11,16,18,31,33,45,56型に対する抗E4抗体を英国の共同研究者から確保した。HPVタイプの判明している子宮頚癌の前癌病変である頸部上皮内新生物(CIN)におけるE4蛋白発現の検討を行ったところ、これまでの報告と同様にCINの中層から表層部にかけてE4蛋白の局在が観察された。調べて範囲内ではE4蛋白の発現は多いが、間質にある免疫担当細胞などにも染色されるため、これが単なる交差反応か意義のある所見かどうかについて検討している。今後、HPV型の判定結果を確定させてから、E4抗体のHPV型特異性についての検討を行う予定である。E4蛋白の免疫染色はHPV感染の診断に応用できる可能性があり、新しいHPVワクチンのターゲットとしてE4蛋白が有効である可能性がある。
|