研究概要 |
初年度に私共は頭頸部癌由来の細胞株を用いてGALR1の安定発現細胞細胞株を作成し,この細胞株をGALで刺激すると細胞増殖が抑制され,その機序はアポトーシスの誘導ではなく細胞周期を停止によることを見出した.次にGALR1の情報伝達経路を観察するとGAL刺激でErkが約15倍と有意に活性化され長期に持続する一方で,PI3K経路に属するAktやp70の活性化には有意な差を認めなかった.更に,これらの伝達系とGALR1の機能との関係を知るためにGi蛋白の特異的阻害剤(PTX),Erkの特異的阻害剤(U0126),PI3K経路の特異的阻害剤(LY294002)を用いてを検討するとGALR1が頭頸部癌においてはPI3K経路ではなく,Gi蛋白からErk活性化する経路を介して働くことが示された.今年度は更にGALR1由来の細胞周期停止機構を解明する共に,これらの抗腫瘍効果について動物実験モデルを用いて検討した.この結果,GALR1発現細胞ではGAL刺激により癌抑制遺伝子であるp27の発現が増強されるとともに,細胞周期抑制因子であるp57が増強された.この一方,細胞周期を促進するサイクリンD1の発現は抑制された.また,U0126を用いた実験ではこれらの細胞周期関連蛋白の調整がErkの下流に存在することが証明できた.これらの結果は,GALRIはErkを活性化することにより細胞周期調整蛋白を調整し細胞周期を抑制,この結果癌抑制性に働くものと思われた.更に,マウスを用いた治療実験でもGAL刺激によりGALR1発現腫瘍の増殖が著明に抑制され,これらの抗腫瘍効果が生体内でも証明できた.このようにGALR1の抗腫瘍効果は頭頸部癌治療の一助となりうることが示唆さた.
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