研究概要 |
骨盤神経叢由来の骨盤神経の直腸枝は腸間膜内を腸管に沿って上行する枝と、直腸壁内を上行する枝の二つに分かれる。これらの枝が排便運動にどのように関与しているか十分に解明されていない。骨盤神経叢直腸枝の排便運動に関与する働きをヒルシュスプルング病根治術のモデルを用いて研究した。 【実験方法】ビーグル犬(9〜10kg)を使用。 対照犬(3頭):開腹し下部結腸の1)後腸間膜動脈流入部より5cm口側,2)後腸間膜動脈流入部,3)後腸間膜動脈流入部の5cm肛門側,4)腹膜翻転部の4箇所にSGT(strain gage force transducer)を装着。各SGTを1cH,2cH,3cH,4cHとした。他群も同様にSGTを4箇所装着。 骨盤神経叢直腸枝切断犬(3頭):開腹し直腸枝の腸間膜上行枝および直腸奨膜筋層を1cm幅全周性に剥離し直腸壁内上行枝を切断し筋創部を修復。 経肛門Soave法犬(2頭):経肛門的に大腸を切断し,肛門外よりSoave法を用いてpull-throughを施行。 開腹Soave法犬(2頭):開腹し後腸間膜動脈を切断,腸間膜処理を行い,結腸を切断しSoave法でpull-throughを施行。各群の排便時の大腸運動を解析。 【結果】対照犬は排便時に4cHの大きな弛緩と3cHの大きな収縮波形がみられた。骨盤神経叢直腸枝切断犬では同様な弛緩・収縮波形はみられなかった。開腹Soave法犬でも排便時に4cHでの弛緩・収縮波形、3cHでの大きな収縮波形はみられなかった。経肛門Soave法犬では4cHで排便時に弛緩波形がみられたが、3cHで大きな収縮波形はみられなかった。 【まとめ】下部結腸運動ならびに排便運動に対して骨盤神経叢直腸枝が重要な役割をしていること,経肛門Soave法犬でみられた排便時の弛緩波形は骨盤神経叢直腸枝の腸間膜上行枝が関与していることが示唆された。
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