研究概要 |
主導管上皮に存在するtuft細胞はGα-oを発現し,tuft細胞以外の主導管を構成する細胞(明調細胞I,II型,暗調細胞)の管腔面と核上部の細胞質もGαoが陽性であった。Gαoの機能はチャネルやイオンの調節に関与しているという報告がある。Gαoの存在する明調細胞I,II型と暗調細胞は基底側に発達した基底陥入を有する。この基底陥入は導管線条部や腎尿細管に良く発達し,電解質の放出,輸送が頻繁に行われている。主導管における細胞分布の研究により,明調細胞I,II型が全体の細胞の90%を占めている。この細胞の機能を明らかにすることが,主導管の機能を明らかにすることにつながる。また機能が分かっていないtuft細胞は基底陥入は有さないが,やはりGαoが微絨毛や核上部に存在する小胞周囲に発現している。各細胞に於けるイオンに関係のある酵素(H^+/K^+ATPase)の発現を研究し,最終唾液形成における主導管上皮の働きを考察した。 H^+/K^+ATPaseの光顕免疫染色:主導管上皮を構成する明調細胞I,II型,暗調細胞やtuft細胞の管腔面に染色が陽性であった。特に明調細胞II型やtuft細胞に反応が強かった。 H^+/K^+ATPaseの電顕免疫染色:主導管上皮を構成する明調細胞I,II型,暗調細胞やtuft細胞の管腔面の細胞膜や上皮直下の小胞に金コロイドが観察された。tuft細胞の細胞頂部には多くの小胞が存在するが,その頂部小胞全体に金コロイドが観察された。 Gαoの発現強度とH^+/K^+ATPaseの発現強度は一致していた。H^+/K^+ATPaseはイオン代謝に関与する酵素であり,主導管を構成する細胞は,特にtuft細胞や明調細胞II型は唾液のイオン調整に関与していることが示唆された。
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