研究分担者 |
土肥 敏博 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00034182)
北山 友也 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60363082)
森岡 徳光 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20346505)
北山 滋雄 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80177873)
|
研究概要 |
新規Ca^<2+>動員物質として発見されたcyclic ADP-ribose(cADPR)は種々の細胞機能に関係する.しかし,中枢神経系痛覚伝達における役割については不明である.本研究では脊髄における痛覚伝達に対するcADPRの役割について検索した。 cADPRの脊髄腔内投与により2週間前後持続する強力なアロディニアを惹起することを見い出した.cADPRは細胞膜表面抗原CD38によりβ-NAD^+からさ細胞外で産生され,ヌクレオシドトランスポーター(NT)により細胞内に輸送されてFK506-binding protein(FKBP12.6)を標的としてリアノジン受容体に作用してCa^<2+>を遊離し,好中球遊走や副腎カテコールアミン遊離に重要な役割をはたすことを認めた.cADPR誘発アロディニアはcADPRに競合拮抗する8Br-cADPRおよびNT阻害薬(NBT-1,イノシン,ウリジン),リアノジン受容体阻害薬(高濃度ryanodine),SERCAポンプを阻害し細胞内Ca^<2+>プールを涸渇させるthapsigarginの脊髄腔内投与で抑制されることを見い出した.cADPRが脊髄において病態生理学的疼痛の発症,維持に重要な役割を果たしており,その機序にリアノジン受容体を介した細胞内Ca^<2+>ダイナミックスの変化が関与することを示唆した.加えて,cADPRが炎症性疼痛および神経因性疼痛や糖尿病性疼痛を初めとする難治性疼痛の発症,維持機構にキー分子として重要な役割を担うことを明らかにし,cADPRの細胞機能発現に関わる機能分子の阻害薬が抗アロディニア作用,抗痛覚過敏作用,鎮痛作用,抗炎症作用を有することを見い出した.これら機能分子が新しい神経因性疼痛の治療法,治療薬開発のターゲット分子になる可能性を示した.
|