研究概要 |
歯原性上皮の腫瘍化に伴う骨内微小環境の動態および腫瘍との相互作用の異常を解明するため、細胞外基質分解酵素とその制御因子、血管新生因子、相互作用のメディエーターとその受容体について、歯胚、エナメル上皮腫および悪性エナメル上皮性腫瘍における発現を免疫組織化学的に検索した。 1.uPA,uPAR,PAI-1,マスピンの検討:uPAは間葉系細胞、uPARは上皮性細胞に主として認められ、PAI-1発現は両者にみられたが、マスピンは上皮性細胞のみに認められた。uPAおよびuPARの発現は歯胚に比べエナメル上皮性腫瘍で高い傾向がみられ、PAI-1は歯胚に比ベエナメル上皮性腫瘍で低い発現傾向を示した。またマスピンは歯胚に比ベエナメル上皮腫で有意に高かったが悪性エナメル上皮性腫瘍での発現は低かった。 2.PD-ECGF/TP、アンジオポエチン1,2の検討:PD-ECGF/TPは非上皮性細胞に発現し、歯胚に比べエナメル上皮腫で有意に高い発現を示した。アンジオポエチン1,2は主に基底膜付近の上皮性細胞に発現し、歯胚やエナメル上皮腫に比べ悪性エナメル上皮性腫瘍においてアンジオポエチン1は低く、アンジオポエチン2は高く発現する傾向を示した。 3.IGF,PDGFおよびその受容体の検討:これらの分子の発現は主として基底膜付近の上皮性細胞にみられた。IGF-IIの発現は歯胚に比べエナメル上皮腫で有意に高く、類腱型エナメル上皮腫では他の亜型に比べIGFおよびその受容体の高発現を示した。PDGFおよびその受容体は悪性エナメル上皮性腫瘍で高い発現を示し、PDGFは濾胞型エナメル上皮腫で叢状型に比べ高い発現を示した。
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