研究概要 |
コンポジットレジンは異種材料により構築される複合材料であり,フィラー,シランカップリング層,マトリックスレジンの各相の構造および物性がコンポジットレジンの変形および破壊現象に大きな影響を与えている。前年度に確立したフィラー洗浄方法がシランカップリング剤のフィラー表面の吸着量を増大させた。本年度は試作コンポジットレジンを作製し,ダイアメトラル引張り試験およびビッカース硬さ試験法を用い,コンポジットレジンの長期耐久性を検討した。今回のダイアメトラル引っ張り試験の結果より,試作コンポジットレジンの初期物性およびサーマルサイクリングによる温度負荷試験5000回に関して,統計学的に有意差は認められなかったが,ザーマルサイクリング10000回においては実験群における引張り強さは38.5±4.2MPaであり,対照群である28.8±4.0MPaと比較して有意差が認められた(p<0.05)。 本実験で用いたフィラー表面洗浄法はフィラーとマトリックスレジン界面での構造欠陥の原因の1つと考えられる表面汚染物質除去として優れており,それに伴うフィラー表面のSi-OH基数の増加,すなわち,フィラーとシランカップリング剤との間に形成されるシロキサン結合の増加により,フィラーとマトリックス界面における理想の結合を獲得できる可能性が示唆され,高強度のコンポジットレジンを作製していく上で有用であると考えられる。
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