研究概要 |
本研究はヒトの歯髄より簡単に多分化能を持つ細胞を分離培養する方法を開発することを目的に,表面抗原を指標にして細胞を分離してきた。FACSやMACSなどの装置等を用いて実験を行い以下の方法により以下の結果を得た。 (1)ヒトの歯より無菌的に歯髄を採取し、outgrowth法により増殖した細胞について細胞の表面抗原の違いによる分離をおこなった。CD73,74,106,146,166,271,STRO-1の7種類の表面抗原について、その発現陽性率をFACSを用いて解析したところ、CD166以外の6つの抗原の発現率は著しく低かったが、CD166についてはその陽性率が約20%認められた。 (2)CD73を除く上記表面抗原にて細胞をマーキングし、陽性細胞をMACSシステムの磁気ビーズシステムにより分離した。そして分離した細胞をそれぞれ増殖させ、骨分化能を検討した。その結果、CD74,106陽性細胞群は非陽性細胞群に比べてアリザリンレッド染色性が低く、CD146,STRO-1については陽性、非陽性細胞群共に同様の染色性を示し、CD166,271陽性細胞群はアリザリンレッド染色性が明らかに高かった。そしてCD166,271陽性細胞群はアルカリフォスファターゼ活性も高かった。CD166,271陽性細胞群のアリザリンレッド染色性は、歯髄細胞をMACSシステムで分離する前のクルードな歯髄細胞の染色性よりも高く、特にCD166陽性細胞群ではその差が顕著に示された。 本研究よりCD166は歯髄由来の細胞から骨分化能の高い細胞を分離するために有用な抗体であり、磁気ビーズシステムにより簡便にその細胞をソートすることが出来ることが判明した。
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