研究概要 |
バルブメタル上にリン酸カルシウムのナノ粒子を創製することを目的として,リン酸水溶液にハイドロキシアパタイト(HAP)を飽和させた電解液中で,バルブメタルを電極として極性を交互に反転させながら低電圧で電解処理をおこなった.その電解条件とナノ粒子のキャラクタリーゼーションを検討した.その結果,pH3の電解液では,TiとTaではHAPが,ZrではHAPとモネタイトが,NbではHAPとモネタイトおよびブルシャイトのナノ粒子が析出した.析出した結晶相は,電極近傍のOH^-の濃度と電解液中に存在するリン酸種に依存すると考えられる.TiとTaの場合,電解がすすむと,電極近傍のOH^-の濃度が高くなり,しかも,電解液中にリン酸種HPO_4^<2->が高濃度に存在するためにHAPが析出したと思われる.OH^-の濃度が低い場合は,ブルシャイトやモネタイトの両結晶が析出しやすいと思われる.析出したナノ粒子の形態は次のようであった.Tiでは約2μmの円盤状,六角柱状の結晶が集積していた.Zrでは,長径約200nmの楕円状と約100nmの細長い粒子の集合体であった.Nbでは,約50nmの粒状であった.また,Taでは約50nmのブロック状粒子が積層した状態であった.結晶の形態は,下地金属の結晶方位と陽極酸化によって生成した酸化被膜の性状に依存すると思われる.さらに,XPSの分析結果から,バルブメタルの酸化被膜中にP^<3+>,または,リン酸イオンが取り込まれることが分かった.この極性交互交換による低電圧の電解法は,リン酸カルシウム化合物のナノ粒子が生成しやすい表面特性を創製することを示唆している.
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