研究概要 |
本研究の目的として,1)リン酸化アミノ酸およびリン酸化ペプチドのチタン表面に対する結合・解離特性について,ナノレベルかつリアルタイムで解析し,そのメカニズムを解明するとともに,2)骨形成因子をチタン表面に固定化する手法について検討を行い,以下の結果を得た。 1.チタン表面へのリン酸化アミノ酸およびリン酸化ペプチドの結合メカニズムについて,(1)チタン表面は,ゼロ電荷点(pH6.7)より低いpHで正に帯電すること,(2)リン酸基は,負に帯電し,正に帯電したチタン表面に結合すること,(3)リン酸基は,pH2.0以下でチタン表面へいわゆるエッチング様効果をもたらし,強固な化学結合を生じることが明らかとなった。 2.o-phospho-L-serineをチタン表面に,一端,固定化した後,ペプチド縮合剤である水溶性カルボジイミド(Water Solube Carbodiimide:WSC)の応用は,Bovine serum albumin fraction Vや骨形成因子Recombinant human Bone Morphogenetic Proteins(BMP)-2をチタン表面に結合させることを可能とした。 以上の結果より,リン酸化アミノ酸をチタン表面に固定化し,WSCを応用することは,目的のタンパク質を容易に修飾することができ,さらに合成コストを抑制することが可能となることを示唆している。しかしながら,骨形成因子BMP-2をチタン表面に確実に固定化し,その活性を引き出すためには,さらなるデータの蓄積を必要とする。また,本研究の目的の一つであったBMP-2により表面改質されたチタン表面での細胞接着特性については十分な解析を行うことができず,明確な結論を得ていない。したがって,チタンインプラントの高機能ナノバイオ表面改質の確立に向けて,新たな課題が残り,引き続き,検証を行う必要がある。
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