研究概要 |
目的:有床義歯補綴治療のための適切な診断を行う上で,義歯床下粘膜のバイオメカニクス特性の客観的な評価は重要である.義歯床下粘膜のバイオメカニクス特性を総合的に評価し,診断基準を確立するために,義歯床下粘膜における硬さと厚さの関係を検討した. 方法:口蓋粘膜に異常の認めない有歯顎者10名の口蓋粘膜部における3箇所(第一大臼歯側方部・口蓋側方部・口蓋正中部)を計測部位とした.硬さ(ヤング率)は触覚センサー,厚さは超音波厚さ計を用いて計測した. 結果:ヤング率は口蓋正中部が最も高く(2.4±0.8MPa),口蓋側方部で最も低かった(1.0±0.5MPa).粘膜の厚さは口蓋正中部で最も薄く(1.2±0.3mm),口蓋側方部で最も厚かった(2.8±0.7mm).ヤング率と厚さは,直線関係を示したが,粘膜の薄い部位ではヤング率の値が広く分布していることが示された. 結論:ヤング率の値が広く分布する部位があり,一概に厚さからヤング率の推定はできないことが示された.義歯床下粘膜のバイオメカニクス特性を客観的に評価し診断基準を確立するためには,硬さと厚さをそれぞれ評価する必要性が示唆された.
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