| 研究概要 |
本研究では,日々増え続ける日常臨床でのデジタルデータを活用する技術の一端として,補綴物作製のための歯科用CAD/CAMシステムを発展させた,歯列模型計測装置の開発を行った.また,この装置を中心とした,RPシステムを用いた模型の再現方法,あるいは,窩洞形成評価システムなど,様々な応用についても併せて検討した.その結果,現状用いている石膏模型のレーザ計測システムで,短時間のうちに十分な精度を持ったデータの収集が可能であること,また,そのデータを用いた評価が可能であることなどを報告してきた.そのひとつとして,これまでに開発してきた歯科用CAD/CAMシステムで用いてきたデータのSTLデータ形式への変換と,ABS樹脂を熱溶解積層させて造形を行なうRPシステムの融合による,石膏模型の置き換えに関する研究を行い,石膏模型の保管場所の問題が解決されることを示した.また,このシステムを用いることで離れた場所との石膏模型の移送などに新たな方法を示すことができた.次に,模型計測のさらなる精度向上のために,計測器そのものの改良を行い,計測時の軸構造を新たに組み直すことでアンダーカットや微小構造なども,短時間で精密に計測することができるようになった.これにより,単に臨床応用時における石膏模型の記録にとどまらず,学生実習に用いる顎模型の計測が可能であることが分かり,窩洞形成などの評価システムとしても十分な実用性が生まれたと考えられる.以上の研究により,歯科医療におけるデジタル化を,単なる個々のデータ群の集まりとしてではなく,相互に利用可能な形での集合体としてまとめることが可能となる.現在では,こうしたデジタルデータを取り込む手段は多岐にわたっているが,その活用方法などを最適化することで,記録すべきデジタルデータの量は,さらに減らすことが可能であると考えられる.
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