研究概要 |
本研究では,陶材などの審美修復材と歯質との新規接着システムを構築するため,陶材にレジンを接着させる場合に多用されているシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,γ-MPTS)を一液あるいは二液性に調製したセラミックプライマーを用い,シラン処理陶材に対する接着性レジンセメントの接着性と接着耐久性を調べ,保管安定性および接着耐久性の高いセラミックプライマーの開発を行った。 塩酸を添加した90vol%エタノール水溶液にγ-MPTSを溶解し調製した一液性セラミックプライマーの場合,調整直後からγ-MPTSのメトキシ基の加水分解が起こり,保管時間の経過とともに,加水分解したγ-MPTS分子種が分子間で脱水縮合し,シラン分子種の分子量が増大するため,シラン処理の効果が低下し,シラン処理陶材に対するレジンセメントの接着強さを低下させることが明らかとなった。これは,一液性のセラミックプライマーではγ-MPTSの加水分解・縮合反応を制御できないためである。 そこで,セラミックプライマーの保管安定性を向上させるため,塩酸を添加した50vol%エタノール水溶液とγ-MPTSを溶解した100vol%エタノール溶液とからなら二液性のセラミックプライマーを試作した。その結果,セラミックプライマーの保管安定性は大きく向上し,長期間保管しても調整直後と同程度の接着強さが得られることが明らかとなった。 また,陶材にレジンを接着した試験体を冷温水に浸漬し,接着耐久性試験を行った結果,二液性セラミックプライマーは優れた接着耐久性を示し,市販セラミックプライマーに比べて大きく向上することが明らかとなった。今後,接着耐久性を向上させた原因を探るため,γ-MPTSのメトキシ基の加水分解促進剤として添加されている酸性成分の種類が接着耐久性に及ぼす影響を明らかにしていく必要があると考えられた。
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