研究概要 |
本研究の目的は,歯質接着の前処理剤としてセルフエッチングプライマー(SEP)を用いるデュアルキュア型レジンセメント(RC)の重合性に及ぼすSEP中に含有される酸性モノマーの影響を調べることであった。組成の異なる市販の4種の接着システムを試験した。RCの重合の程度を評価するため,牛歯象牙質およびアクリル板(PMMA)に対するRCのせん断接着強さを,SEPの処理時間(10秒または30秒)を変え,また,RCに光照射した場合としない場合(それぞれ,光重合および化学重合様式)で測定した。また,酸性モノマーの残留程度を評価するため,各SEPを象牙質面に塗布後のpH変化を測定した。 SEPの調製直後のpH値は製品により異なり,約1.5〜3.3の範囲であった。各SEPの象牙質塗後のpH値は,塗布後5分後でさえ約0.3〜1.5程度の上昇であり,RC適用時の処理面にはまだかなりの酸性モノマーが残存していることが示唆された。 いずれの接着システムにおいても,象牙質に対する接着強さは,SEPの処理時間および重合様式の相違により有意な差は認められなかった。しかし,PMMAに対する接着では,2種の接着システムで,化学重合試料のほうが光重合試料に比較して有意に低い接着強さを示した。また,PMMAの前処理をSEPの代わりにレジンインレー用光重合型プライマー用いた場合では,いずれのRCの接着強さも化学重合試料のほうが光重合試料に比べ有意に低下した。そして,2種のRCではほとんど接着しなかった。 これらの結果から,各SEP中に含有される酸性モノマーはRCの化学重合性に影響を及ぼしている可能性があり,2種の製品では,その影響を抑制するために,SEP中に第2の化学重合触媒が添加されていることが示唆された。
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