研究概要 |
【研究目的】 従来の味覚に関する検査法として,全口腔法,濾紙ディスク法,電気味覚法などの検査法が報告されているが,固形の試験試料を用い,咀嚼の進行による口腔内での味の広がり程度との関連性に関する検査法は極めて少ない.そこで本研究では咀嚼が味覚に及ぼす影響を検索するために,新たな検査法として,咀嚼の進行(咀嚼回数)と口腔内での味の広がり程度との関連性について分析を行うことを目的とした. 【研究方法】 被験者は健常有歯顎者43名である.寒天より抽出されたアガロース(3%濃度)にスクロースを2%と5%の濃度になるように添加して,一辺15mmの立方体の試験試料を作製した.両濃度の試料を無作為抽出し被験者にこれを咀嚼させ,指定された味の広がり認識するのに必要な咀嚼回数を測定した.味の広がり程度の基準として,舌一部で感じた,舌全体に広がった,の2項目を設定した.さらに,関連する顎口腔機能の検査法として,グミゼリーによる咀嚼能率の測定,唾液分泌量の測定,濾紙ディスク法による味覚検査,最大咬合力の測定,口腔関連QOL(日本語版OHIP)の調査の5項目を施行した。 【研究成果】 味の広がり程度の違い,あるいはスクロース濃度の違いによって味の広がり程度を認識するのに必要な咀嚼回数に有意差が認められたことより,2段階の味の広がり程度と2段階のスクロース濃度を設定した被験条件の妥当性が確認された.また,関連する顎口腔機能検査の結果より,咀嚼の進行に伴う味の広がりを調べることは,従来の味覚検査法では見いだせなかった味覚の感受性の一面を明確にするのに有効であることが示された.
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