研究概要 |
臼歯部の咬合支持の消失、下顎位などの変化が全身状態と何らかの関連性を持っていると考えられるが、科学的な裏づけを得るにはいたっていない.そこで唾液中のコルチゾール(Cts)、免疫グロブリンA (s-IgA)濃度およびα-アミラーゼ活性(αAms)の測定により、咬合支持の喪失を補綴装置により回復した場合の身体に及ぼす影響をストレスと免疫機能との関係から調べた. (1)義歯による疼痛との関係が疑われたので、正常有歯顎者19名に床下粘膜の疼痛を想定して、部分的局部加圧できる実験的口蓋床を装着し、疼痛の程度との関係を測定した。 (2)医員3名を選び、それぞれ義歯に対して何らかの不満を訴えて来院した患者4名ずつを割り当てた.咬合支持域はEichnerの分類B1縲廝4とC1とした.また義歯を装着していない患者3名ずつを割り当て,義歯製作過程で、唾液の採取を行い中長期の観察を行った.各測定日の最後に特性・状態不安(STAI)を調べた. その結果、口蓋粘膜への局所圧刺激はCts濃度およびαAms活性値を上昇させることが明らかとなった.s-lgAはCts濃度と同様の傾向を示す被験者と一定傾向を示さない被験者があった.不安傾向にある者は,ない者と比較して,同程度の口蓋部への刺激でも,ストレスを生じやすい可能性が示唆された.疼痛のある義歯を装着した患者は、Cts、αAms活性値ともに増加し、不快症状がなくなるとそれぞれ低下した。しかしs-IgAは長期欠損を放置した患者に大きく低下が見られる場合があったが、個人差が大きく有意な傾向を示さなかった.また義歯の非装着時で咬合支持のないときとに比較して義歯装着時では低下傾向が認められたが、個人差が大きかった。これは義歯からの疼痛、不快症状などの影響が大きく影響し、今後被験者の性格、ライフスタイルなどとの関係を検討する必要性がわかった.
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