研究課題
基盤研究(C)
MMP-1プロモーター領域の2G型多型が転写活性を高めることが知られている。口腔癌患者におけるMMP-1遺伝子多型を解析することによって、そのリスクファクターとしての意義を明らかにすることを目的にMMP-1多型と口腔癌の発症について検討を進めた。検体収集:対象は新潟大学医歯学総合病院口腔外科、信州大学医学部歯科口腔外科、長岡赤十字病院歯科口腔外科で治療を行った口腔扁平上皮癌(舌、歯肉、頬粘膜、口唇粘膜、口底)患者と非罹病者(癌の既往を有しない性、年齢一致群)の血液からgenomicDNAを抽出した。SNP遺伝子型検出:MMP-1プロモーター領域2G多型の検出用TaqMan MGBプローブ&プライマーセットによってリアルタイムPCRによるSNP多型検出を口腔癌患者群(170例)とコントロール群(164例)について行った。さらに、患者と対象(健常者群)の群間において2Gおよび1G allele頻度の偏りを統計学的に検討した。臨床データの集積:口腔癌患者群の年齢、T分類、腫瘍長径、組織所見、予後経過(生存率)、再発の有無等のデータを集積し、MMP-1 2G allele保有口腔癌患者の悪性度、予後経過を検討した。遺伝子発現解析:口腔扁平上皮癌患者群の生検時に病理組織用検体とともに腫瘍組織小片を採取した。腫瘍検体よりRNAを抽出し、逆転写反応:2gのtotalRNAを鋳型として逆転写酵素によるcDNA合成を行った。合成したcDNAを鋳型とし、TaqMan MGBプローブ&プライマーセットを用いてMMP-1遺伝子発現レベルを定量した。発現データと各患者のMMP-1多型データおよび臨床パラメータとの間に統計学的に有意な関連は見出されなかった。結果と考察:今回のMMP-1プロモーター領域の多型の検討によって2Gアリルを有することが口腔扁平上皮癌の発症において有意に高頻度であることが示された。この傾向は45歳以下の若年層において明らかに顕著であると共に、この年齢の8割強が舌癌であることを勘案すると、口腔癌の発症には遺伝的な要因とともに口腔内の部位に特異的な要因が含まれていることが示唆された。また、一般集団の8割が2Gアリル保有者である事実を考えると、2Gアリルは口腔癌の発症に必須であるが、決定要因ではなく、他の遺伝的あるいは環境的な因子の関与が不可欠であることが示唆される。これらのことを基にして、国際学術誌に掲載した。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件)
Cancer 112
ページ: 1272-81
BioMed Central Cancer 7
ページ: 187-187
BMC Cancer 7