研究概要 |
本研究では,鼻呼吸と口呼吸の相互調節機能の減少が,上気道が関与する各生理機能に影響を与えるという仮説のもとで,鼻腔内および軟口蓋・口蓋垂部の圧・化学受容器などの調節因子が鼻呼吸と口呼吸の協調に影響を与えるかを検討した.初年度の18年度は,上気道の開通性の維持,嚥下機能の両方の機能維持に重要な役割を果たしている,オトガイ舌筋の筋活動性について,ミダゾラム鎮静法による就眠時の自然嚥下の発生頻度と上気道の開通性の関連を検討した.その結果,陰圧負荷がオトガイ舌筋の筋活性を亢進し,上気道の開通性だけでなく,嚥下機能も増強することが分かった.研究2年目の19年度は,上気道の開通性の維持,嚥下機能に極めて重要な役割を果たしている,オトガイ舌筋の反応性について,プロポフォールによる意識下鎮静法中の咽頭部の閉塞圧と鼻腔の吸気量の変化との相関を指標にして検討した.その結果,吸気時の一過性の呼吸負荷と軽度の炭酸ガス蓄積が,オトガイ舌筋の筋活動性を亢進し,上気道の開通性を改善するが,覚醒反応は必ずしも必須の要件ではないことが明らかになった.また,陰圧負荷により誘発される唾液の自然嚥下も覚醒反応を伴わない場合があることが分かった.また,プロポフォールの意識下鎮静法中の,オトガイ舌筋の筋活動性の亢進による咽頭部の閉塞圧の変化と覚醒反応の閾値に,性別の差が存在する可能性も分かった. 2カ年の研究結果は,Respiratory Physiology & NeurobiologyおよびAnesthesia & Analgesiaに掲載され(印刷中),さらに(1)睡眠中の覚醒反応を伴わない自然嚥下が何故起こるのか,(1)性別の差があるとすれば,性ホルモンなどの因子が関与しているのか,など極めて重要な検討事項についても,Respiratory Physiology & NeurobiologyならびにJ.Oral.Rehab.に投稿中である.
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