研究概要 |
1.口腔扁平上皮癌(OSCC)組織中のバイオマーカー同定のためのプロテオーム解析; 本学付属病院における8例のOSCC手術検体の腫瘍および同一個体の正常上皮の凍結組織を別々にレーザーマイクロダイセクション法により採取し、タンパク質の抽出を行った。さらに、SELDIシステムのイオン交換チップ上でのピーク検出条件の検討を行った。その条件に基づき、ディフェレンシャル・プロテオーム解析を行った結果、腫瘍(OSCC)群において有意に増加または減少しているピークが検出され、口腔癌の腫瘍バイオマーカーの候補となり得ると考えられた。 2.口腔扁平上皮癌のリスク診断マーカー(遺伝子マーカー)の検索; 癌は遺伝子の異常であり、癌体質かどうかは遺伝的な要因が大きく左右すると考えられている。したがって、個の癌予防を実現させるためには、個人の癌リスク診断が必要である。そこでゲノムワイドなSNPs多型の検出・分析によるcase-control studyによってリスクマーカー遺伝子を検討した。DNAを採取・精製し、マイクロビーズアレイシステムによるSNPs検出を行った。OSCC疾患群117例:対照群153例の間で、各染色体400〜500ヶ所上の計5984SNPsにおける分布率の差をX^2検定したところ、p<0.0001を示したものは2番,6番,7番,8番,10番、11番,12番,16番,19番染色体上の9SNPsで、p<0.001であったものが15SNPs、p<0.05が327SNPsに認められた。次にEMアルゴリズムによるHaplotypingを行ったところ、1353SNPsがmappingされ、2群間でのX^2検定でp<0.00001となったものは24ブロックで各染色体上に点在していた。 1と2の結果から、複数のマーカー候補が存在し、これらを組合せることで診断およびリスク診断マーカーとして有用であると考えられた。
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