研究概要 |
イソフルランによるプレコンディショニング(PC)の心筋保護効果においては再灌流後のアポトーシスの抑制が重要とされている。これにはアポトーシス蛋白の発現、PI3-kinaseを介したAkt(protein kinase B)の活性化を伴うReperfusion Injury Salvage Kinase(RISK)pathwayが主要な役割を果たしていると考えられている。しかし、セボフルランによるPC効果においてこの経路が活性化するかどうかは解明されていない。セボフルランによるPCにおける虚血前後のphospho Akt発現の経時的変化およびアポトーシス阻止タンパクであるBcl-2,誘導タンパクであるBaxの発現をWestern Blottingで検討した。モルモットを用い,Langendorff灌流心で30分間虚血,120分間再灌流を行った。これを対照群(CTL群)とし,sevoflurane PCとしてセボフルラン(1MAC)を虚血前に10分間投与後,10分間wash outした(SEV群)を作成した。左心室圧(LVDP),左室拡張終期圧(LVEDP),心筋梗塞サイズ(IS)ついて2群間で比較検討した。梗塞サイズはSEV群で有意に縮小した。また、虚血5分、20分、再灌流120分で左心室より心筋を採取しWestern Blottingを行った。Bcl-2,Baxとも2群間で発現に差は見られなかった。また、phospho-Aktの発現はCTL再灌流10分と比較すると有意に発現増強が抑制されていた。セボフルランによるPCではイソフルランによるPCと異なりPI3-Akt pathwayの関与は低いと考えられる。今後、Extra-cellular signal-regulated kinase(ERK)などの関与を検討する必要がある。
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