研究概要 |
近年の研究により低分子G蛋白質Rhoファミリー(Rho, Rac, Cdc42)がアクチンの再構成を制御して,細胞形態の維持,細胞接着,細胞運動などに関わっていることが報告されている。私たちは癌細胞が基底膜を分解し,浸潤を開始する過程に焦点を絞り,細胞運動の分子機構の解析を行っており、本研究ではRhoファミリーの癌細胞の基底膜浸潤への関わりを検討した。 一方,口腔扁平上皮癌の治療において,病理組織標本における,悪性度の評価には山本・小浜分類(Y-K分類)が広く用いられているものの、個々の癌細胞がいかなる機序で異なった浸潤様式を示すかについては全く不明である。本研究では口腔粘膜由来のヒト扁平上皮癌細胞で,Y-K分類において3型,4C型および4C型の浸潤像を示す細胞株OSC-20, OSC-19, HOC313細胞を用い,異なった浸潤像を示す分子機構-特にRhoファミリーとの関わりを中心に-の解析を試みた。 口腔粘膜由来のヒト扁平上皮癌細胞で,Y-K分類において3型,4C型および4C型の浸潤像を示す細胞株OSC-20, OSC-19, HOC313細胞を用いて各細胞を異なった基質上で培養し,その細胞形態の変化を観察した。各々のsmall G protein activityを標的蛋白のGST-fusion蛋白を用いたpull down assayにて調べた。さらに基底膜分解の初期段階をフィブロネクチン分解・浸潤モデルを用いて浸潤パターンの違いを検討した。その結果、その結果、HOC313細胞でrho activity, OSC-20とOSC-19細胞でrac, cdc42 activityが認められた。それらの浸潤像を検討したところ癌細胞の単独培養ではOSC-20細胞とOSC-19細胞でフィブロネクチン分解活性が高かった。HOC313細胞は線維芽細胞と混合培養することによって他の2種の細胞より高いフィブロネクチン分解活性を得られた。すなわち線維芽細胞との相互作用の影響を大きく受けていることが示唆された。そしてその浸潤能の制御にはMT1-MMPをsiRNAにてノックダウンすることにより、MT1-MMPが大きく関与していることが示された。
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