研究概要 |
本研究では,angiogeninを標的としたsiRNA発現プラスミドDNAによる口腔癌の抗腫瘍モデルを作製することによって,angiogeninを介する癌の増殖および腫瘍血管新生機構の解明,そして癌細胞ならびに腫瘍新生血管内皮細胞内のangiogeninを標的とした癌治療への応用を目指した。 AngiogeninとVEGFの分泌量が共に高い口腔扁平上皮癌HSC-2細胞に加え,angiogeninの分泌量は低いがVEGFの分泌量が高いSCCKN細胞を実験に選択した。両細胞のangiogenin発現の抑制の結果,in vitroで増殖抑制が認められたが,HSC-2細胞で著明であった。次に,RNAiによりHSC-2細胞におけるangiogeninの発現を抑制すると,45SリボソームRNAの産生量は低下し,リボソームの産生量の指標である銀染色されたnucleolar organizer regions (NOR)のドット数も低下した。また,angiogeninの発現抑制によりAkt (Ser473)のリン酸化も抑制された。そして,angiogeninの発現をノックダウンしたHSC-2細胞をヌードマウス背部皮下に植え付けた結果,著明な増殖抑制効果が認められた。 以上から,angiogeninは腫瘍血管新生作用のみならず癌細胞におけるリボソーム産生促進とPI3K-Akt経路を介しても口腔癌の増殖・進展に関与することが示唆された。さらに,HSC-2細胞では,VEGFが多く産生されているにもかかわらずangiogeninの発現抑制によりin vivoで著明な腫瘍増殖抑制効果が認められたという事実から,VEGFの腫瘍血管新生作用にangiogeninが必要であることが推察された。
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