研究概要 |
歯周病原性細菌に感染した細胞のアポトーシスが歯周疾患の発症や進行に関与していると仮説をたて,ヒト免疫細胞における感染後の細胞動態についてA. actinomycetemcomitansをヒト単球細胞由来のTHP-1細胞に感染させるin vitroの実験系を確立し,感染細胞のアポトーシス発現について検討した。この結果,細胞内のp38MAPキナーゼの活性が上昇し,アポトーシスによる細胞死を発現することを明らかにした。この結果をもとに,さらに詳細な検討を今回の研究期間内に検討を行ったところ,炎症性サイトカインであるTNF-αがA. actinomycetemcomitans感染ヒト単球細胞のアポトーシス発現に関与することが明らかになった。さらにTNF-aを抑制するTNF-αアンタゴニストあるいは抗TNF-α抗体を感染実験系に加えたところ,TNF-α産生とp38活性が抑制され,さらにはアポトーシスによる細胞死を抑制する結果を得た。TNF-αはマクロファージ/単球から産生されるサイトカインであり,好中球や血管内皮細胞に働いて炎症反応から免疫系への情報伝達を担い,細胞死を制御するとともに骨破壊にも関与する。近年,細菌感染症でのTLRの役割が注目されている。なかでもTLR2とTLR4は免疫細胞における微生物認識機構として機能し,免疫応答に関与している。我々は本研究期問内において,感染THP-1細胞ではTLR2が有意に増加するが,TLR4に変化は認められないといった結果を得た。
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