研究課題
基盤研究(C)
本研究では歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisの分子量40k-Daの外膜タンパク(40k-OMP)を抗原とした経鼻・経皮免疫について解析した。40k-OMPを無毒化変異型コレラ毒素Aサブユニットと大腸菌易熱性毒素Bサブユニット(mCTA/LTB)を経鼻免疫することにより、1年以上もの長期にわたって野生型コレラ毒素(CT)をアジュバントとして用いた場合と同レベルの血清IgG、IgAならびに唾液IgA抗体が維持されていた。一方、mCTA/LTBは、CTを用いた場合に高レベルで誘導されるIL-4とIgE抗体応答が顕著に抑制されていた。誘導された抗体はP.gingivalisの共凝集活性、赤血球凝集活性を顕著に抑制し、P.gingivalisの口腔感染による歯槽骨吸収を顕著に抑制した。以上の結果から、40k-OMPとmCTA/LTBの経鼻免疫ワクチンは有効性ならびに安全性の高いワクチンであることが示唆された。本研究ではさらに、自然発症高脂血症(ApoE^<shI>)マウスを用いて、P.gingivalis感染が誘因となる動脈硬化に対する40k-OMPワクチンの効果について解析した。最初に、ApoE^<shl>マウスに.P.gingivalisを経静脈感染あるいは口腔感染させることにより、血清中のIL-8値が顕著に上昇し、動脈硬化病変部面積の増大がみとめられたことからP.gingivalis感染がApoE^<shI>マウスの動脈硬化を増悪させることが示された。さらに、ApoE^<shI>マウスを40k-OMPとCTとともに経鼻免疫した後、P.gingivalisを感染させると、非免疫群に比較して動脈硬化病変部面積の顕著な抑制がみとめられた。以上の結果から、40k-OMPの経鼻ワクチンはP.gingivalis感染が誘因となる動脈硬化を抑制することが示唆された。
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