研究概要 |
本研究では,口腔常在菌Streptococcus gordoniiのランダムノックアウトライブラリを用い,分子生物学的手法に基づく混合バイオフイルムのスクリーニング方法を新規開発することにより,S. gordoniiのどの様な分子が歯周病原性菌Porphyromonas gingivalisとの混合バイオフイルム形成過程に関与するのかを明らかにした.まず,ニトロセルロース膜を用いた混合バイオフイルムの大量スクリーニング法を用いて約1000株のS. gordoniiランダムノックアウト株のスクリーニングを終了した.スクリーニング終了時点で,単一菌種バイオフイルム形成能は有するがP. gingivalisとの混合バイオフイルム形成能が欠如しているS. gordonii19株が選出された.これらの株において,ノックアウトされている遺伝子をArbitary-Primed PCR法を用いて同定し,混合バイオフイルム形成に関与する10遺伝子を明らかにしたところ,これらの遺伝子群はその推定機能により以下のような4つのグループに大別された.i)菌体内および菌体間シグナル伝達(cbeおよびspxB),ii)細胞壁生合成と菌体表層凝集素タンパク質の構造維持(murE, msrAおよびatf),iii)莢膜生合成(pgsAおよびatf),iv)生理機能(gdhA, ccmAおよびntpB).さらに,同定された遺伝子について,各々に特異的ノックアウト株およびコンプリメント株を作成し,P. gingivalisとの混合バイオフイルム形成能を野生株と比較したところ,全ての特異的ノックアウト株において形成能の低下が認められ,またそれらのコンプリメント株では形成能の回復が確認された.
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