研究概要 |
リポポリサッカライド(LPS)とタンパク分解酵素を歯肉溝に塗布して作製したラット歯周炎モデルには,肝臓の脂肪変性が観察される。本研究の目的は,ラット歯周炎モデルにおいて脂肪肝の起こるメカニズムを以下の点から検討することである。 1. 歯肉溝に塗布したLPSが血中に移行して肝臓に作用するか? 2. LPSに反応した歯周組織の細胞が活性酸素種(ROS)を産生し,そのROSが血中に移行して肝臓に作用するか? 3. LPSを塗布してから脂肪肝が起こるまでに,サイトカインは何らかの役割を果たすのか? 平成18年度はラットに歯周炎を惹起した後,血清中のLPS,ROSおよびTNF-αの濃度を定量したところ,いずれも正常ラットよりも高くなった。8-OHdGに対する免疫染色でも組織ホモジネート中の定量分析でも,歯周炎ラットの歯周組織と肝臓において8-OHdGの陽性細胞と濃度が増加していた。 これらの結果から,(1)歯肉溝に塗布したLPSが血中に移行して肝臓に作用する可能性があること。(2)LPSに反応した歯周組織の細胞がROSを産生し,そのROSが血中に移行して肝臓に作用した可能性があること。(3)歯肉溝へLPSを塗布してから肝臓の脂肪変性が起こるまでに,サイトカインは何らかの役割を果たす可能性があることが明らかになった。 平成19年度は,歯周炎誘発ラットに高コレステロール食を与えた時の血液中と肝臓の酸化ストレスマーカーの変化をみた。血清中のreactive oxygen metabolites濃度は高コレステロール食の摂取により有意に増加したが,ヘキサノイルリジン濃度は有意ではないが増加傾向にあった。肝臓の8-OHdG濃度は高コレステロール食の摂取により有意に増加した。これらの結果により,高コレステロール食の摂取は歯周炎の誘発に相加的に血液中,肝臓の酸化ストレス度を増加させることが示唆された。
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