研究概要 |
痛みは共有できる感覚ではないため,評価することや患者さんの痛みを比較することは,評価する側の主観が作用するため,極めて困難である.そこで本研究は,画像処理工学の手法の一つである表情認識技術を用いて,人の痛みの有無や程度を客観的に評価するためのスケールを作成し,熟練看護師と同レベルの痛みに対する推定能力を,より客観的に実現するための基礎的な研究を行うことを主目的としている.平成18年度は,文献レビューをはじめ,データの信頼性・妥当性を得るための痛み刺激発生方法の検討および評価のための画像特徴の抽出と検討を中心に行った. 1 国内外における各領域での痛みの評価に関する文献レビュー(遠藤,中野担当) 2 痛み刺激発生方法の検討(佐伯,中野担当) データの信頼性・妥当性を得るために,副交感神経の指標となる発汗量や心電計によるR-R間隔などの検討を行った.また,刺激部位や回数,電流・電圧など痛み刺激の発生に関する検討も行った. 3 実験環境の調整(中野担当) 撮影条件を一定にするため撮影機器の設置場所,撮影角度の検討や実験に使用するシールドルームの環境整備を行った. 4 画像特徴を抽出するためのアルゴリズムの検討(中野担当) 顔画像の中から目・口・眉などの限定された顔領域を抽出する.次にこれらの領域に対して,カテゴリー毎に画像特徴(エッジ情報,座標位置情報,領域情報など)を抽出し,精度を改善するために統計的手法の一つである固有値顔の利用可能性を検討した.アルゴリズムを検討するにあたり,従来の方法では計算時間がかかるという問題点があったが,計算方法にクラス間分散を最大かつクラス内分散を最小にする点を考慮した.このデータを用いニューラルネットワークによる学習を用い精度を改善していく予定である.
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