研究概要 |
上部消化管がん患者の術後機能障害を評価するために、先行研究において術後機能障害評価尺度32項目(DAGUS-32 : Dysfunction After Upper Gastrointestinal Surgery-32)を確立した。しかし,患者の立場からより項目数が少なく,感度の高い尺度に洗練する必要があると考え,本研究に取り組んだ。3施設の共同研究で其々の施設の倫理委員会の承認を得た。対象は上部消化管がんの手術を施行し選定条件を満たした患者約1000名で,質問紙調査(DAGUS-20)を行った。回収数は992名,胃癌669名,食道癌222名,平均年齢65.7±9.8歳,食事にかける平均時間26.7±23.3分,体重減少-7.3±8.1kgであった。尺度の合計得点平均は,100点満点中31.3点(最小1-最大76)であった。尺度の有用性を検討するために信頼性と妥当性を検討した。信頼性の検討(クロンバックα係数20項目全体のCronbach'sα係数0.911,下位尺度のCronbach'sα係数0.612~0.856,再テスト法;合計得点の信頼性係数0.865),妥当性の検討(既知グループ技法,因子分析による下位項目の因子構造から因子的妥当性)を行った。探索的因子分析の結果,DAUGS32における術後機能障害は,20項目7因子から構成されていた。それらの因子名は,順に「逆流障害」,「活動力低下障害」,「食直後通過障害」,「ダンピング様障害」,「移送障害」,「低血糖障害」,「便通障害」に分類され,DAGUS-32同様の因子が温存された。今回開発したDAUGS20は,信頼性・妥当性ともに確保され,臨床への有用性の高い尺度である。
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