研究課題
基盤研究(C)
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は、成人期に発症する緩徐進行性の下位運動ニューロン疾患であり、四肢近位部の筋力低下・筋萎縮と球麻痺を主症状とする。患者は男性のみであり、女性保因者は通常無症状である。病因はアンドロゲン受容体(AR)第1エクソン内のCAGリピートの異常延長であり、異常延長したポリグルタミン鎖が病態の中心と考えられているが、根本的治療は存在しない。本研究では、CAGリピートが異常延長したヒト変異ARを発現するトランスジェニックマウスモデル(SBMA-Tg)を使用して、SBMAのモデルに対する肝細胞増殖因子(hepatocytegrowthfactor: HGF)高発現の治療効果を検討した。HGFは、初代培養肝細胞の増殖活性を指標に肝細胞増殖因子として我国において精製・クローニングされた増殖因子であるが、その後の研究発展によりHGFが多様な細胞に対して、その増殖、細胞移動、分化、生存作用、さらには器官形成・血管新生促進作用を持つことが明らかになってきている。SBMA-TgとHGF高発現マウスのダブルトランスジェニックマウスを作成し、表現型をSBMA-Tgと比較検討した。ダブルトランスジェニックマウスでは、HGFが高発現し、SBMA-Tgの運動能、生存率、体重が改善した。この改善効果は、抗アンドロゲン療法との混合治療でも認められた。HGF高発現は、SBMAの病態を改善させる可能性があると考えられた。
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