研究課題
基盤研究(C)
HBV感染細胞内には1本鎖(SS)、2本鎖直鎖状(DL)、2本鎖環状(RC)の3種類のHBV DNAが存在するが、完全なHBV粒子を形成するのはRC HBV DNAのみである。本研究ではRC HBV DNA合成に及ぼすHBV変異とB型肝炎の病態への影響を検討した。1)B型慢性肝炎の経過中に致命的な急性増悪をきたした1症例における、RC HBV DNA合成能の変化とその責任HBV変異の検討。B型慢性肝炎の経過中に急性増悪をきたした1症例における急性増悪1年前(P1)と急性増悪後(P2)の血清サンプルからHBV P1株、P2株をクローニングした。in vitroにおいてはP1株に比しP2株においてRC HBV DNA合成能の増強が認められた。さらに詳細な検討の結果nt2790のG(P1株)からA(P2株)への変異がRC HBV DNA合成能の増加の直接原因であることが明らかとなり、この変異が疾患の急性増悪の原因であることが示唆された。(2)B型急性、慢性肝疾患症例におけるRC HBV DNA合成能に影響を与えるHBV変異と病態との関連性の検討B型慢性肝疾患44例と急性肝疾患15例を対象としてHBV全長の塩基配列を決定し、次いでRC HBV DNA合成に重要なシス領域であるα、γ、δの3領域(J Virol2004;78:642-9,7455-64)における塩基置換度を各症例において算出した。B型慢性肝疾患における検討ではα、δ領域における塩基置換度が慢性肝炎群より肝硬変/肝癌群において高値であり(p=0.006、p=0.05)、また、B型急性肝疾患における検討ではα、γ領域における塩基置換度が急性肝炎群より劇症肝炎群において高値であった(p=0.03、p=0.0l)。このようなα、γ、δ領域における変異がRC HBV DNA合成に影響を与え、ひいてはB型急性、慢性肝疾患双方の疾患重症化に関与している可能性が考えられた。
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