研究概要 |
地方中枢都市をはじめ地方主要都市には都心部の構成要素としてオフィスビルが立地し,業務空間を形成している.このオフィスビルの主たる入居者が全国企業の支店である.しかし,地方主要都市における支店の集積量は1990年代後半以降減少に転じて,現在に至っている.このことは,地方主要都市のオフィスビルにおけるテナントの減少を招き,オフィスビルの空室化を結果させている.しかも,支店集積の縮小は景気の後退による一時的な現象ではなく,社会の構造的変化によるものである.経済のグローバリゼーション,高度情報化などに伴う大企業のリストラクチャリングによるものである.そのため,支店集積が今後再び大きく増大するとは考えられない.したがって,地方主要都市のオフィスビルの空室化はテナントを支店に依存する限りにおいて解消しないと判断される.事実,地方中枢都市,県庁所在都市のオフィスビルの空室率は一時的に好転する動きを見せる期間も認められたが,1990年代前半期までに見られた状態に復帰することはない.他の用途への利用,あるいは支店に代わるテナントの開拓が必要になっている.なお,全体に地方主要都市における支店集積量が減少しているが,その中にあって対事業所サービス業の支店が増大を続け,この部門の支店の集積・拡大がオフィスビルの空室化の問題を改善する要素と考えられるが,現在のところ他産業の縮小を補う規模にない.
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