研究課題
基盤研究(C)
本年度も継続して、子宮内膜症患者から、同意を得た上で、月経時の疼痛評価(visual analog scale)、子宮内模症病巣の部位と広がり(rASRM)について臨床情報を得た上で、子宮内膜症病巣からの試料収集を行った。昨年度から継続して収集している試料もふくめて、NGFの発現と子宮内膜症病巣との関連性を検討した。本研究によって、子宮内膜症病巣において、正所性子宮内膜に比してNGFの発現およびCTGFの発現強度が著明であることを明確にした。NGFの定量的なmRNA測定におていは、発現強度と臨床的指標(rASRMスコア、疼痛)との関連性は明確ではなかった。しかし、子宮内膜症性嚢胞、腹膜病変、子宮腺筋症などに分類して発現強度解析を行ったところ、腹膜病変においてより著明なNGFの発現を認めた。一方、NGFレセプターである、TrkAおよびp75NTRについても同様の解析を行ったが、主たるレセプターである、TrkAの発現は子宮内膜症病巣周囲においてほとんど認められなかった。一方、p75NTRは腹膜病変、卵巣子宮内膜症、および、子宮腺筋症病巣にて発現を認めた。明確な機能は今後の解析が必要ではあるが、子宮内膜症の進展と疼痛の発症に対して、NGF-p75NTRが関与している可能性を示すことができた。また、子宮宇内膜症患者の腹水中のNGFについても検討を加えた。骨盤痛の程度との関連性は明確ではなかったが、子宮内膜症病巣がある患者においては、腹水中のNGFが陽性を示す比率が高いことが検出された。慢性骨盤痛を発症している子宮内膜症患者の一部にNGF-p75NTRのシステムが関与している可能性があり、今後、アンタゴニストをふくめた治療の可能性、および、慢性骨盤痛に子宮内膜症が関与している場合の補助診断にNGFが使用可能である可能性を明らかにすることができた。
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