研究概要 |
不揮発性ロジックに基づくクイックオン・超並列・動的再構成可能VLSIの基盤技術を確立するため,本年度は,不揮発性デバイスの1つTMR(Tunneling Magneto-Resistive)素子とMOSトランジスタの相対配置と回路のスイッチング特性について検討した.TMR素子はメモリ素子の1つであるが,その記憶状態に応じて抵抗値が変化する可変抵抗素子とみなせる.そのため,TMR素子とMOSトランジスタを直列接続した基本回路構成において,TMR素子を下側(グランド側)に配置すると,TMR素子に電流を流すとトランジスタのソース端子が電圧降下を起こすため,ゲート・ソース間電位が減少し,MOSトランジスタのスイッチングを弱めてしまう.通常,MRAMではこの影響を避けるため,TMR素子を上側(電源側)に,MOSトランジスタを下側(グランド側)にそれぞれ配置して直列接続するが,ロジック回路を構成する場合,TMR素子自体の抵抗値変化のみならず,この電圧降下によるMOSトランジスタへの影響も同時に活用することで,ON・OFF状態の抵抗差をより大きく取ることができ,高速スイッチングが可能となる.本研究の主な成果は,2007年8月開催のMWSCASに採択・発表すると共に,応用物理学会誌の解説論文(2007年12月号),2008年3月初旬の磁気学会と同年3月末の応用物理関係学会にてそれぞれ招待講演を依頼されるなど,MOSトランジスタと新機能デバイスを融合した,今後の新しい集積回路技術の1つとして国内外で評価された.
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