研究概要 |
現在のストレス社会では,日常生活や作業中においてヒトにかかる負荷を評価し,それに応じて外部環境を改善する必要性が増加している.これまでに提案されているリアルタイム副交感神経活動推定手法は呼吸情報と心拍変動を取得・解析するものであるが、外乱に弱いために安静座位でしか使用することがきでなかった.そこで今年度は(1)昨年度に引き続き外乱の除去手法の評価,(2)リアルタイム評価のためのシステムの実装,(3)評価実験を行った. (1)外乱の除去手法の評価として,安静時の心拍,血圧,呼吸,喉の動きを計測し,呼吸位相領域で解析を行った.その結果,呼吸の特徴点に着目する解析手法で心拍変動に現れる呼吸性の変動成分を抽出できることがわかり,本研究で提案している信号処理手法の有効性を生理学的に検証することができた. (2)リアルタイムに副交感神経活動を推定・表示するシステムを実装した.これまでの研究結果に基づき,心拍変動の補間にBerger法を用い、呼吸計測に際して安静時には伸縮性のベルトを,体動がみられる作業時にはサーミスタを用いる信号処理を実装した.その結果,簡便に取り扱えるリアルタイム副交感神経活動評価システムを構築することができた. (3)(2)で構築したシステムを用いて,作業時,安静時,体動時におけるリアルタイム副交感神経活動推定実験を行った.その結果,呼吸計測にベルトのみを用いた手法では体動の影響で推定値が小さくなる現象がみられたが,提案手法ではその影響を軽減できることがわかった.また,暗算負荷により副交感神経活動が抑制される様子をリアルタイムに評価できた.さらに,リアルタイムで得られた副交感神経活動の推定値を用いて暗算負荷及び投影する映像を制御するシステムを構築し,自律神経情報に基づいた外部環境の最適化への可能性を示すことができた.
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