研究概要 |
本研究課題は,サンプル片の光学異方性をアクティブ計測し,その計測値を直接用いることでCGレンダリングを行う.複雑な光学異方性を持つような物体表面でも,膨大な数値計算をすることなく高品質な質感レンダリングが実現できる.グラフィックエンジンのパワーが高くなっている現状で,計測に基づくレンダリングを行う意味は,複雑な質感を持つ表面のモデル化が不要になることである.物体表面の質感は微細な凹凸,吸収・反射,屈折・回折・干渉など複雑な物理現象の結果として得られる.特定の照明条件の下でならば,入射光と反射光の光学異方性の分布からある程度モデル化が可能である(BRDFなど).しかし,更に複雑な照明条件下では物体表面の光学異方性分布そのものが変化してしまうため,質感モデルを利用しても不自然なレンダリング結果になることがある.計測ベースのレンダリングならば,複雑な照明条件も実際の光源で再現して照射すればよく,物体表面で実際に起こっている複雑な現象のモデル化という問題を回避しつつ高品質な質感レンダリングを可能にする. 光学異方性を持つサンプル片を高速に制御する手法としてMEMSミラーデバイスを検討した.このデバイスはMEMSミラーとして現在唯一市販されているもので,ミラーサイズが数ミリ角で共振周波数が500〜8kHz程度である.ただしサンプル片を付けると回転部の質量・慣性モーメントが変化するため,共振周波数は一般的に下がる.光源を照射しながら応答をCCDカメラで撮影し,サンプル片の接線方向と入射光の方向を自由に変化させながら,その計測値を直接レンダリングに用いる手法を検討した.照明の位置とCCDカメラの位置が固定になってしまうため,レンダリング情報が不足することがあり,このような場合の情報補完技術などが課題であるが,本研究で提案した手法の基本的な有効性は示された.
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