研究課題
萌芽研究
最近、美の問題に関する脳科学的研究(神経美学)が盛んであるが、美のモードに関する研究は未踏である。モードの典型的な例は、音楽における長調と短調に対応する美である。モードは音楽だけでなく芸術作品一般に、明朗な美(以下、長調美(major beauty)とよぶ)と、悲しい美(以下、短調美(minor beauty)とよぶ)が存在する。本研究では、これら短調美と長調美の認知科学的特性と脳内基盤の差異に焦点をあて、認知感性心理学的手法と脳イメージング技法を駆使した分析を行う。具体的には、和音を素材として,長調(Major)と短調(Minor)という異なる調性が生み出す情緒的内容と、両者によって生成される美醜(Beauty/Ugliness)に関与する脳活動をポジトロン断層法(PET)を用いて測定した。その結果、調性にかかわらず,美しい音楽を聴取している場合は、醜い音楽の聴取時に比べ、報酬過程に関与するdorsomedial midbrainに有意な賦活がみとめられた。一方、醜い和音列聴取時は,right inferior parietal lobuleやleft insulaなど悲しみや恐れの表情認知や不快感情に関与する部位の局所血流量増加が認められた。さらに、長調の美しい和音列聴取時は、短調の美しい和音列聴取時にくらべ、整合性や秩序性をもつ情報処理に関与するleft middle temporal gyrusが、短調の美しい和音列聴取時は、報酬に関与するright corpus striatumに有意な賦活が見られた。以上の結果は、調性によって独自の脳基盤が存在することを示唆するものであり、美的感覚の多様性が脳内に表現されている可能性を示している。得られた研究成果は国際誌であるCognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience誌に掲裁され、国際会議The 10th International Conference on Music Perception and Cognitionにおけるシンポジウムでも発表される予定である。
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Cognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience (印刷中)
東北心理学研究 56(印刷中)
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