研究概要 |
本年度は,研究計画の最終年度にあたり,昨年構築した電気生理学的計測系とデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を組み合わせた実験系を用いて,ダイナミック・クランプ法を行う実験を行った。まず,ラット大脳皮質体性感覚野と一次聴覚野の神経細胞の4種(錐体細胞,介在細胞3種)の電気的特徴を詳細に記録した。これらの細胞の特徴を考慮して,ダイナミック・クランプ法を用いて細胞間のシナプス結合を人工的に作成し,局所回路の再現を試みた.また,化学シナプス(AMPA,NMDA,GABA_Aなど)やギャップ結合などの細胞間結合を生理学的知見に基づき数理モデルによって擬似し,実際の細胞との結合関係の変化に対する膜電位振動の影響を調べた.さらに,ダイナミクスが既に知られている膜電位依存性のイオンチャネル電流の関数を複数個用意し,これらのダイナミクスをDSPで計算した結果を実際の細胞に電流注入することによって,数理モデルの妥当性を検討する実験系を作成した.この結果,実験では直ぐに得られないパラメータの推定が可能となり,数理モデルの作成を効率的に支援する実験系を構築することが可能となった.こうした結果は,国際会議(37th Annua1 meeting of Society of Neuroscience)と国内学会大会(Neuro 2007,第30回日本神経科学会大会)で報告した.また,国際誌(Bio Systems)に成果論文を投稿することができ,受理された。
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