研究課題
萌芽研究
本研究ではWnt5aおよびWnt-3aが中枢神経の再生阻害タンパク質であることを見いだした。Wnt5aおよびWnt-3aはin vitroで小脳顆粒細胞の神経突起の伸展を抑制し、この効果はRhoAおよびRho-kinaseに依存しており、受容体のひとつであるRykに依存していた。ラットの脊髄損傷後にWnt-5aおよびWnt-3aは、損傷周囲部のオリゴデンドロサイトに発現上昇を示した。それに対し、Wnt-4など他のWntタンパク質は発現誘導されなかった。またRykは神経細胞に発現していた。さらにRykがin vivoで損傷中枢神経の再生阻害に働いているかどうかを検討するために、ラット脊髄損傷モデルを用い、抗Ryk中和抗体を2週間にわたり局所投与した。その結果、抗Ryk中和抗体治療群はコントロール群と比較してより良い運動機能の回復を示した。また脊髄組織を検討したところ、運動機能を担う皮質脊髄路の再生現象がこれら治療群では認められたが、コントロール群では認められなかった。以上の結果からWnt-Rykが成体において、中枢神経損傷後の再生阻害因子として働いていることが明確に示された。したがってWnt5aおよびWnt-3aは損傷周囲部に発現し、軸索先端部に働くことによって、軸索の再生を抑制していることが示唆された。神経回路の形成に必須のタンパク質が成体においては回路の再形成の抑制に働いているという事実は興味深い。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
J. Cell Biol. 173
ページ: 47-58
J. Biol. Chem. 281
ページ: 15970-15979