研究概要 |
1)脂質過酸化によるAβ排泄蛋白の発現量の検索 ビタミンE輸送タンパク(αTTP)遺伝子をノックアウトすることにより抗酸化分子であるビタミンEを中枢神経系から完全になくしたマウス(TTPa^<-/->マウス)は中枢神経系に著明な脂質過酸化が負荷されている.このTTPa^<-/->マウスでは大脳から血中へのAβ排泄が低下していたが,大脳内皮分画でAβ排泄蛋白であるLRP-1,P-gpの蛋白量を定量したところ,wild-typeマウスと比べ著明に増加していた.脂質過酸化によりAβ排泄機能が低下したことを発現量の増加により代償しようとしている可能性が考えられた. 2)脂質過酸化によるAβ重合亢進の検索 TTPa^<-/->マウス大脳のsynaptosome分画をAβと反応させ線維化したAβを定量したところ,wild-typeマウスと比べ著明にAβの線維化を認めた.脂質過酸化のかかったアルツハイマー病モデルマウスにおいて老人斑が増加していたことの一因と考えられた. 3)脂質過酸化によるAβ分解酵素活性低下の検索,Aβ産生亢進の検索 脂質過酸化がAβ分解酵素活性に及ぼす影響を調べるため,ネプリライシン活性をTTPa^<-/->マウス大脳でin vitroで定量したところ,wild-typeマウスと比べ変化を認めなかった.脂質過酸化による老人斑の増加の一因としてのAβ分解酵素活性低下の証拠は得られなかった. また,脂質過酸化がAβ産生に及ぼす影響を調べるため,β-ならびにγ-セクレターゼ活性をTTPa^<-/->マウス大脳で定量したところ,wild-typeマウスと比し両者とも変化を認めなかった.Aβの前駆体であるAPPのmRNAの発現量も脂質過酸化のかかったアルツハイマー病モデルマウスでの変化は認めなかった.脂質過酸化による老人斑の増加の一因としてのAβ産生亢進の証拠は得られなかった.
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